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私の好きなウイスキーの世界や、Barでの出来事を通じて、

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単独インタビュー第20弾 新年企画「Shot Bar Zoetrope オーナー堀上 敦氏を迎えて(6)」

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堀上さん:日本のウイスキー自体をそんなに見た事がない方が多いので、「こんなに並んでいるのは見た事がない、ワ~オッ!」って

K:本当にそうですよね。

堀上さん:正直なところ、うちには美味しいものも美味しくないものもあります。古い1級や2級のものもありますから。そういうものも一応メニューに載っているので、外国から来た方が注文される事があります。その際に、「それはあんまりリコメンドしないよ」って答えるんですよ。

K:はい。

堀上さん: 「え、そうなの?じゃあ他のにする」って方もいらっしゃるんですが、「良いんだ、ちょっと興味があるから飲みたいんだよ」、って方もいらっしゃる。「美味しい?」って聞いたら、「オネスティーだな、君」と言われて。「俺はオネスティーだよ」、と(笑)。いう話をした事がありますけど。

K:その方もそう思われたという事ですよね。

堀上さん: 「飲まなきゃ良かった」って(笑)。だから言ったじゃん、って。

K:ええ、興味があったのでしょうね。

堀上さん:古い2級のものだったので、モルトマニアの人が飲んで美味しいと思う訳はないんですよ。

K:イメージが出来上がっていますものね、分かりませんが、モルトはこういうものだ、という...。

堀上さん:そうですね。昔の2級ウイスキーは、ブレンド用アルコールが入っていたりするものですから。

K:開けるものではなくて、観賞用という訳ではないですが、ご紹介する等でお見せする方が良いのでしょうかね。ただ飲みたいという方がいらっしゃったらお出しする。

堀上さん:古い商品に関しては、日本のお客様でも非常に印象的な、ちょっと忘れられないエピソードがありました。僕よりもうちょい年上のお客様がいらっしゃった時に、バックバーをご覧になって、「『ブラック50』なんて置いてあるの?」、「ええありますよ」って。「俺ずーっとそれだったんだよ。若い頃、いつもそれ飲んでいたんだ。飲んでもいいの?」もちろん、良いですよってお答えしてお出ししたんです。

K:ええ。

堀上さん:そのグラスに口をつけて、「いやー、ずっとこれだったんだよな」って感慨に耽られてお話をされて、「俺さ、良い事があった時も悪い事もあった時も、ずっとこれ飲んでたんだよ」と、突然涙をポロポロポロとこぼされたんですよ。それから「いやぁ、俺もう2度とこの店来ないよ」って言われたんですよね(笑)。

K:もう思い出を取っておきたいという気持ちというのか、

堀上さん:ええ。「ここに来ると、きっとまた俺泣くから、来ない」って仰って、本当にいらっしゃらないです(笑)。

K:(笑)。

堀上さん:又お見えになるかどうかは別として、良かったなと思いましたね。

K:そうですね。その方は再会出来たわけですものね。

堀上さん:良い時も悪い時もずっとこれを飲んでいたんだって話しながら、色んなことが甦って来たんだと思うんですよ。

K:ええ。個人的には良いお話だと思うのですけれど、その男性にとっては思い出してポロポロってしてしまったのが、多分恥ずかしくて...

堀上さん:多分そうだと思います。

K:ですよね。つくられている方も嬉しいでしょうね。その方の思い出になっているというのか、

堀上さん:外国の方に「飲むんじゃなかった」と言われて、それはその通りだと思っていますし、だから最初から「美味しくないですよ」とお伝えします。たまに、古いお酒はレアで出し惜しみしてるのではないのかと思われる方もいらっしゃいます。でも、それはもったいないからじゃなくて、今のモルト好きの人にとっては本当に美味しくないからなんですよ。

K:ええ。

堀上さん:ただ、昔飲んでいた人にとっては、美味しい美味しくない、を超越したものがあるので、古いものはそういうお客様に飲んで欲しいですよね。

K:はい。

堀上さん:勿論、古くても美味しいものはありますから、それは新しい発見として、新しい方に飲んで頂くのは全然構わないんです。でも古くて美味しくないやつは最近飲み始めた人は別に飲まなくて良いと思っているんです。もっと美味しいものがいくらでもあるのに、わざわざそれを飲む必要はないですから。

K:そう、興味がある人がいてそこでどう判断するかですけれど、これがあってこういう風に時代が流れて来たんだ、という風に思えれば良いですけれどね、

堀上さん:良いですけれどね。

K:それが凄くお好きで、そういう思いで飲まれている方の横で、これまずい、という風に言われたら気持ち的にも、

堀上さん:そうですね。

K:出している側としても微妙な感じになりますしね。

堀上さん:そうですね。

K:皆さん正直ですからね。

堀上さん:だから自分が飲んでいたのではなくても、お父さんが飲んでいたとか、おじいさんが飲んでいたとか、テレビでそのウイスキーのCMを観ていたけどその頃自分はまだ子供で飲めなかったから、今飲んでみたいとか。何かの‘思い’があれば僕は全然良いと思うんですけれどね。

K:ええ。

堀上さん:思いも何もない方が飲まれても、美味しくないだけですから。それだったら現行の、例えば角瓶とかブラックニッカとか飲む方が全然美味しいですよ、昔の2級を飲むより。

K:ただこれからも増えるでしょうね、知りたいんだ、という方が。

堀上さん:そうですね。マニアックな方が歴史的な事を知りたい、と思って飲まれるのは、これまた別な意味の‘思い’があるので構わないと思います。
うちではサントリー「Q」とキリン「NEWS」が地味に人気があるんですよ(笑)。40代、50代の方が注文されるのは、もちろん思い出と一緒に味わうって事ですからね。「実はコーラで割って飲んだ事しかないんだ(笑)。昔コーラで割っていた『Q』を、今テイスティンググラスで、ストレートで飲む。あぁ、香りしねぇなぁ(笑)」みたいな感じで、面白がって飲まれているのを見るのは楽しいですよ(笑)。

K:そう考えるとお酒は歴史がありますね。有り難うございます。(7へ続く)  (5へ戻る)


※当時のインタビューのまま掲載、移行しております。

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